ライト効果の設定
今回のスクリプトは、タッチするたびに照明の色が変わるものにしましょう。
最初は明かりがついていなくて、タッチすると赤く光り、次にタッチすると緑、さらにタッチすると青、もう一度タッチすると照明が消える(最初の状態に戻る)ような動きにします。
この段階で、ステートとイベントの構成は思い浮かぶようなら、着実にスクリプトのスキルは進歩しています。
肝心の「照明の色を変える」方法については初めてですので、実現するための命令を紹介します。
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, integer on, vector color, float intensity , float radius, float falloff]
);
これが照明効果を設定するための命令です。
簡単に説明すると、
integer on
この部分は「TRUE」か「FALSE」を指定します。
「TRUE」でしたら照明効果ON、「FALSE」はOFFです。
vector color
照明の色の指定です。
vector型は前に椅子のところで出てきましたが、
<1.0, 0.0, 0.0>
こんなふうに書きます。
この三つの数字が何を意味しているかというと、先頭から順番に、「赤色の強さ」「緑色の強さ」「青色の強さ」です。
red,green,blueの順なのでRGB値と言われます。
画像を描いたことのある人にはお馴染みですね。
各数字は0.0~1.0で指定します。赤・緑・青の色の強さを組み合わせて好みの色を指定するわけですが、全部が0.0の場合は黒、全部が1.0の場合は白になります。
代表的な色を紹介しておきましょう。
色RGB値赤 <1.0, 0.0, 0.0>緑 <0.0, 1.0, 0.0>青 <0.0, 0.0, 1.0>黄色<1.0, 1.0, 0.0>水色<0.0, 1.0, 1.0>紫 <1.0, 0.0, 1.0>白 <1.0, 1.0, 1.0>灰色<0.5, 0.5, 0.5>黒<0.0, 0.0, 0.0>
float intensity
光の強さです。
float型というのは小数で、ここでは0.0~1.0を指定します。
1.0が一番強い光になります。
float radius
光のとどく範囲です。
オブジェクトの中心からの半径で指定します。
単位はメートルで、10.0メートルまで指定可能です。
float falloff
光の減衰率です。
大きな値なほど、遠くまで弱まらずに光が届きます。
指定可能な範囲は0.0~1.0です。
具体的にどのような数値を指定するのか示しておきます。
例えば、赤色の照明を最高の明るさで半径5メートルの範囲に光らせるには、以下のようになります。
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, TRUE, <1.0, 0.0, 0.0>, 1.0, 5.0, 1.0]
);
青色の照明を、半分くらいの強さで半径3.5メートルの範囲に、減衰率50%で光らせるには、以下の通りです。
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, TRUE, <0.0, 0.0, 1.0>, 0.5, 3.5, 0.5]
);
照明を消すときには、
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, FALSE, <0.0, 0.0, 0.0>, 0.0, 0.0, 0.0]
);
こうなります。
消すときには色や光の強さにはどんな値が指定されていても構いません。
さて、これで照明効果をコントロールする方法がわかりました。
椅子やドアのスクリプトをマスターした方であれば、以上の情報で、タッチするたびに「赤」「緑」「青」「消灯」と変化する照明のスクリプトを作ることができるはずです。
自信のある方は続きを読む前に、ぜひ自分でスクリプトを組んでみて下さい。
初めての照明スクリプト
今までのセオリー通りにスクリプトを組むと、こんな風に出来上がるはずです。
default {
state_entry(){
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, FALSE, <0.0,0.0,0.0>, 0.0, 0.0, 0.0]
);
}
touch_start(integer detected){
state red;
}
}
state red {
state_entry(){
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, TRUE, <1.0,0.0,0.0>, 0.5, 3.0, 0.75]
);
}
touch_start(integer detected){
state green;
}
}
state green {
state_entry(){
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, TRUE, <0.0,1.0,0.0>, 0.5, 3.0, 0.75]
);
}
touch_start(integer detected){
state blue;
}
}
state blue {
state_entry(){
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, TRUE, <0.0,0.0,1.0>, 0.5, 3.0, 0.75]
);
}
touch_start(integer detected){
state default;
}
}
もしかしたらステートoffというのを作った方もいらっしゃるかもしれません。
それでもOKです。
このスクリプトは、
「default」ステートが「開始されたとき」に「照明をOFF」
「default」ステートで「タッチされた」ら「ステートredに変更」
「red」ステートが「開始されたとき」に「照明を赤にする」
「red」ステートで「タッチされた」ら「ステートをgreenに変更」
「green」ステートが「開始されたとき」に「照明を緑にする」
「green」ステートで「タッチされた」ら「ステートをblueに変更」
「blue」ステートが「開始されたとき」に「照明を青にする」
「blue」ステートで「タッチされた」ら「ステートをdefault(消灯状態)に変更」
このような動きです。
イベントも今まで登場したものだけですので、それほど難しくはないかと思います。
同じ処理をまとめよう
ですが、このスクリプトを見ていて、
「なんだか同じようなコードの繰り返しだなぁ・・・」
と思いませんでしたか?
どのステートのstate_entry()イベントもllSetPrimitiveParams()を呼び出していて、red、green、blueについては違うのは色の指定だけです。
ステートが4つもあるのでコードは長くなってますし、もしもさらに色を増やしたいと思ったら、また新しいステートを増やして、同じようなコードを記述しなければなりません。
もう少しすっきりとしたコードにならないでしょうか。
今回ぜひマスターして欲しいのは、このような場合に同じ処理をまとめて記述する方法です。
lslでは、繰り返し使うような処理をまとめて、「ユーザー関数」にすることができます。
単純なユーザー関数はこんなふうに書きます。
関数名(引数){
処理;
}
引数というのは、この関数に渡すパラメータです。
今回の例では照明の色が変化しますので、色データを引数として渡すのがベストです。
処理の部分では渡された色データに応じて照明効果を設定します。
例えば、このようになります。
light(vector color){
if (color == ZERO_VECTOR) {
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, FALSE, ZERO_VECTOR, 0.0, 0.0, 0.0]
);
}else{
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, TRUE, color, 0.5, 3.0, 0.75]
);
}
}
見慣れないものがいくつかありますので説明しておきます。
まずZERO_VECTORですが、これは<0.0,0.0,0.0>のことです。
いちいち<0.0,0.0,0.0>と書いてもいいのですが、この値はしばしば使うので、簡単に使えるようZERO_VECTORという特別な変数が用意されているのです。
それからifというのも初めて登場しました。
これは条件分岐をするための構文で、
if (条件その1) {
条件その1が正しいときの処理;
} else if (条件その2) {
条件その2が正しいときの処理;
} else {
それ以外のときの処理;
}
このように使います。
今回は引数colorがZERO_VECTORかどうかを判定し(color == ZERO_VECTOR)、ZERO_VECTORだった場合は照明OFFにしています。
ZERO_VECTOR以外の場合は引数colorで指定された色で照明をONにしています。
この関数を使って照明スクリプトを書き換えてみます。
integer counter=0;
light(vector color){
if (color == ZERO_VECTOR) {
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, FALSE, ZERO_VECTOR, 0.5, 3.0, 0.75]
);
}else{
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, TRUE, color, 0.5, 3.0, 0.75]
);
}
}
default {
state_entry(){
counter = 0;
light(ZERO_VECTOR);
}
touch_start(integer detected){
counter ++;
if (counter == 0){
light(ZERO_VECTOR);
}else if(counter == 1){
light(<1.0,0.0,0.0>);
}else if(counter == 2){
light(<0.0,1.0,0.0>);
}else if(counter == 3){
light(<0.0,0.0,1.0>);
}else{
counter = 0;
light(ZERO_VECTOR);
}
}
}
タッチした回数を数えるために、変数counterを用意しました。
integer型というのは整数です。
タッチのイベントの中で、
counter ++;
と書いてあるのは、
「counterの値を1増やす」
という意味です。
タッチするたびにcounterは1ずつ増えていきます。
そしてcounterの値をif文で判定しています。
0だった場合はユーザー関数light()をZERO_VECTORで呼び出しています。
1のときはlight()を<1.0,0.0,0.0>(赤色)で呼び出しています。
以下同様に、2のときは緑、3のときは青で呼び出します。
4以上になったときは、counterの値を0に戻し、light()をZERO_VECTORで呼び出して消灯しています。
このスクリプトですと、もっと色を増やそうと思ったときにはtouch_start()イベントの中に条件を追加してlight()関数を好みの色で呼び出すだけで済みます。
最初に書いたステートがたくさんあるスクリプトに比べて、非常に拡張性が高くなりました。
いろいろな色に光る照明をぜひ作ってみてください。
今回のポイント
照明効果を設定する命令:
llSetPrimitiveParams(
[PRIM_POINT_LIGHT, integer on, vector color, float intensity , float radius, float falloff]
);
ユーザー関数の作り方:
関数名(引数){
処理;
}
(なお、ユーザー関数は全てのステートを書く前に書きます)
条件分岐の構文:
if (条件その1) {
条件その1が正しいときの処理;
} else if (条件その2) {
条件その2が正しいときの処理;
} else {
それ以外のときの処理;
}
変数の値を1増やす:
counter ++;
今回ぜひマスターして欲しいのはユーザー関数の作り方です。
上手なユーザー関数が作れるようになると、スクリプトがよりわかりやすく、シンプルで、拡張性が高くなります。
カラフルな照明が作れるようになりましたが、このスクリプトはまだまだ改良の余地があります。
次回も続けて照明スクリプトの改良を進める予定です。